第2章: 基礎

この章では、Retrospectの主な概念について説明します。このマニュ
アルとプログラム自体は、この基本概念に常に従っているため、
Retrospectの機能を最大限に発揮させるにはこの概念を理解することが重要です。この章では、Retrospectの仕組み、データのバックアップに使用できるさまざまなメディア セットの種類、メディア セットで実行できるバックアップ操作について、説明します。

Retrospectの仕組み

Retrospectは、要求されるまでバックアップ ファイルが削除または上書きされることがないよう保証するバックアップ保管方法を使用します。このため、ファイルはバックアップ メディア上に無期限に維持されます。たとえば、、ある特定の文書で一定期間作業をしていた場合、Retrospectはバックアップのたびにその文書の異なるバージョンをバックアップします。必要に応じて、Retrospectではある特定時点に
バックアップ済みのファイルの旧バージョンを取得することができ
ます。

Retrospectは常にプログレッシブ増分バックアップを実行します。プログレッシブ増分バックアップは、現在バックアップ用に使用しているメディア セットにないファイルのみをインテリジェントにコピーします。これらのファイルは通常、前回のバックアップ以降の新しいファイルまたは変更されたファイルです。「フル」または「増分」バックアップのどちらかを指定する必要はありません。Retrospectはデフォル
トでまだバックアップされていないすべてのファイルをコピーします。

Retrospectでは、バックアップに追加する必要があるのは一意の各ファイルの1つのインスタンスのみであるため、バックアップ メディアの容量を節約できます。このようにしないと、ファイルの重複コピーで容量が使い尽くされる可能性があります。この容量節約の手法は、ファイルレベルの重複除外またはシングル インスタンス ストレージと呼ばれます。

Retrospectでのバックアップ、コピー、復元操作のすべてがソースと宛先を必要とします。バックアップでは、ソースは一般にハード ドライブまたはハード ドライブ上のフォルダです(Retrospectではそれぞれ「ソース」と「お気に入りフォルダ」と呼びます)。宛先は通常ディスクやテープなどバックアップ メディア上に保存されたメディア セットです。

Retrospectは、メディア セットに含まれるファイルとフォルダのインデックスであるカタログ ファイルを使用して、メディア セット内の変更されたファイルの世代を管理します。バックアップ メディアそのものを実際に検索すると、デジタル テープのようなメディアでは特に、時間がかかりますが、カタログによってその必要がなくなるため、ファイルを迅速に検索することができます。デフォルトでは、カタログ ファイルはRetrospectサーバ コンピュータの次の場所に保存されています。Library/Application Support/Retrospect/Catalogs/

ソース

ソースとは、バックアップ対象のディスク ボリューム、ディスク ボリューム上のフォルダ、ネットワーク クライアントです。バックアップする各ソースは[ソース]リストに追加する必要があります。

Retrospectはバックアップするボリュームやフォルダを指すためにソースという語を使うこと、そしてバックアップを書き込むハード ディスク ボリュームに対してもソースという語を使うことを理解することが重要です。たとえば、「マイ ディスク」という名前のクライアントのハード ディスク(ソース)を、「バックアップ ディスク」という名前のハード ディスク上にあるディスクまたはファイル メディア セットにバックアップすることができます(「バックアップ ディスク」もバックアップ可能なハード ディスクであるため、[ソース]リストにも表示される)。

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[ソース]リストの上のツールバーで、ソースの追加や削除、お気に入りフォルダの追加など、[ソース]リストのアイテムを操作できます。リストの下のタブ付きエリアでは、リストで選択したソースについての重要な詳細情報が表示されます。

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メディア セット

メディア セットは、バックアップするファイルとフォルダの宛先です。メディア セットは、1つまたは複数のディスク、テープ、光ディスク、または単一のファイルで構成されています。個々のメディア
(テープ、光ディスク、ハード ディスクなど)は、メディア セットのメンバーです。メディア セットは、1つまたは複数のディスクまたはテープ、または単一のファイルで構成されています。個々のメディア(テープまたはハード ディスクなど)は、メディア セットのメンバーです。1つのメディア セットは、ハード ドライブ、ディスク アレイ、テープ、さらにはフラッシュ メモリなど、 あらゆるストレージ メ
ディアで構成できます。

単一のメディア セットにバックアップできるソース ボリュームの数に制限はありません。たとえば、バックアップ先の単一メディア セットに、自分のコンピュータの内蔵ハード ディスク、外付けハード ディスク、Retrospectクライアント ソフトウェアがインストールされたコンピュータの同僚のハード ディスク、さらにMac OS X ServerまたはWindows Serverもバックアップできます。すべてのメディア セットは、Retrospectの[メディア セット]リストに表示されます。

リストの上のツールバーで、メディア セットの追加、削除、コピー、検証などの機能を使用して、メディア セットを操作できます。リス
トの下のタブには、選択したメディア セットの詳細情報が表示され
ます。

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ディスクまたはテープがデータでいっぱいになると、Retrospectは新しいメンバーを要求し、メディア セットに追加してデータの付加を続行します。使用できる新規または消去されたメディアを自動的に使用します。Retrospectが探している名前を持つメディアがある場合、Retrospectはそのメディアのデータを消去して再利用します。ただし、メディアの名前が異なり、そのメディアにデータがある場合は、自動的に使用することはありません。

Retrospectでメディア セットを作成するとき、次のいずれかのタイプとすることができます:

  • ディスク メディア セットは、Retrospectの最もフレキシブルなメディア セットです。ハード ディスク、NAS(Network Attached Storage)、リムーバブル カートリッジ、フラッシュ メモリなど、複数のランダム アクセス ストレージ デバイスにまたがってバックアップができます。領域を再利用可能にするため、古いバックアップをディスク メディア セットからグルーミングすることができます。また、バックアップ操作で使用中のディスク メディア セットから復元を実行することもできます。テープ バックアップを使用しない場合、ディスク メディア
    セットは最も利用されるバックアップ先となるはずです。ディスク メディア セットでは、各ファイルが600 MBを超えない大きさの一連のファイルをバックアップ先メディアに書き込みます。これは、このようなファイルがオフサイト ヴォールトなどの追加ストレージに複製される環境で便利です。Retrospectでは、バックアップ ファイルを格納するフォルダをディスク メディア セットの単一メンバーと解釈します。ディスク メディア セットは旧バージョンのRetrospectに存在するより柔軟性の低いリムーバブル ディスク セットを代替します。ディスク メディア セットのカタログは、通常Retrospectサーバのハード ドライブに保存されます。
  • テープ メディア セットは、ストレージ メディアとしてテープ ドライブとバックアップ テープを使用します。Retrospectは、DATドライブ、LTOドライブ、AITドライブ、VXAドライブ、DLTドライブを含む、多様なタイプのテープ ドライブに対応します。対応しているドライブの完全なリストは、Retrospectウェブサイトを参照してください。(複数のテープに対応し、それらを自動的に読み込むことができる)テープ ライブラリなどの一部のドライブは、Advanced Tape Supportのアドオンに対するライセンスが必要な場合があります。テープ メディア セットのカタログは、通常Retrospectサーバのハード ドライブに保存されます。
  • テープWORMメディア セットはテープ メディア セットに類似していますが、使用するテープがWORM(Write Once, Read Many)であることが異なります。その名前から分かるように、WORMテープはデータが書き込まれると、削除や再利用ができません。WORMテープはアーカイブ目的で使用され、文書保管の政府規制に準拠しています。テープWORMメディア セットのカタログは、通常Retrospectサーバのハード ドライブに保存されます。
  • ファイル メディア セットは、カタログ ファイルとバックアップされたデータを統合し、単一のファイルとしてボリュームに格納します。ディスク メディア セットを保存できる場所ならどこでも保存できますが、保存先のボリュームのサイズや、ファイル システム(FAT32、NTFS、HFS+など)の最大ファイル サイズに制限されます。ファイル メディア セットのバックアップは、メディアをまたがることはできません。ファイル メディア セットは、すべて(カタログおよびバックアップされるデータ)が単一のファイル内で自己完結している小規模なジョブに役立ちますが、ほとんどの場合、ディスク メディア セットを使用することを推奨します。

メディア アクション

バックアップ スクリプトを手動で実行するときは常に、または後で自動実行するようスクリプトを設定するとき、4つのメディア アクションのうち1つを選択します。メディア アクションによって、Retrospectに物理メディアの処理方法が指示され、それにより、バックアップ対象のファイルにも影響があります。

Retrospectの4つのメディア アクションは次のとおりです。

  • メディア アクションなし:デフォルトで選択されています。現在のバックアップ中にメディアに対して特に処理は必要ないことを通知します。通常、Retrospectはプログレッシブ増分バックアップを実行し、メディア セット上にすでに存在するファイルをコピーしないため、時間とメディア上の領域が節約されます。つまり、新規のファイルおよび最後のバックアップ以降に変更されたファイルのみを、同じメディア セットにコピーします。
  • 新しいメンバーにスキップ:現在のメディア セット内に新しいメンバーを作成します。新しいメディアを要求するダイアログが表示され、次のバックアップ処理で使用するメディアを挿入できます。このメディア アクションは、以前特定のメディア
    セットに使用したメディアが使用できない場合に役立ちます。
  • 新しいメディアセットを開始:新しい宛先メディア セット(以前のメディア セットと類似した名前)を選択したタイプで作成します。メディア セットのタイプに応じて、新規または消去したディスクあるいはテープを使用します。ディスク メディア
    セットの場合は、ディスク上に新しいフォルダを作成し、バックアップされたデータはフォルダ内の一連の600 MBのバック
    アップ ファイルに書き込まれます。「新しいメディアセットを開始」を使用すると、古いメディアを安全なオフサイトのストレージに保管できます。
  • メディア アクションのリサイクル:先に宛先メディア セットのカタログ内容(存在する場合)をクリアし、バックアップされたファイルが見えないようにします。次に、メディア セットの最初のメディア メンバーを探し、使用できる場合は消去します。最初のメンバーを使用できない場合、任意のメディア セットのタイプに適切で、使用可能な新規または消去されたメディアを使用します。ソースから選択されたすべてのファイルと
    フォルダが、メディア セットにバックアップされます。「メ
    ディア アクションのリサイクル」は、1つまたは複数のメディア ピースを再利用する場合に使用します。

注:一致させるオプションがオンになっている限り(デフォルト)、
Retrospectはプログレッシブ増分バックアップを実行し、すでにバックアップされたファイルと完全に一致しないファイルのみを追加します。メディア セットとそのカタログ ファイルが空の場合、Retrospectのプログレッシブ増分バックアップは、バックアップした各ソースの復元に必要なすべてのファイルを自動的に追加します。

カタログ ファイル

Retrospectは独立したカタログ ファイル(通常はRetrospectサーバの
/Library/Application Support/Retrospect/に存在する)を使用して、メディア セットのすべてのファイルとフォルダを追跡します。カタログは、バックアップ メディア上のファイルのインデックスまたは目次と考えることができます。カタログによって、メディアをバックアップ デバイスに挿入することなくメディア セットの内容を参照でき、ファイルの検索および取得が大幅に高速化されます。

カタログ ファイルは、メディア セットとの間でファイルをコピーするすべての操作に必要です。破損したカタログは、メディア セットのリスト表示ツールバーの[修復]ボタンを使用して、修復できます。カタログが失われた場合、または重度の破損によって修復できない場合、メディアを読み取ってインデックスを再作成することにより、カタログを再構築できます。

Retrospectクライアント

RetrospectはMacintoshデスクトップにマウントされた任意のドライブをバックアップできます。ドライブはローカルでも共有ネットワーク上のボリュームでもかまいません。

Retrospectクライアントによって、ネットワーク上のその他のコン
ピュータも、バックアップおよび復元することができます。Retrospectクライアント ソフトウェアを搭載したコンピュータはRetrospectクライアント コンピュータ、または単にクライアントと呼ばれます。Retrospectは、ファイル サーバのインストール、ファイル共有の開始、ボリュームのマウントを実行しなくても、ネットワーク上のクライアントのバックアップを、完全な管理者権限で実行できます。

プアクティブ バックアップ

Retrospectのプロアクティブ バックアップは、ネットワークやディスク構成の変化に対応できます。

プロアクティブ バックアップでは、特殊なスクリプトによるバック
アップを使用します。指定された日時に指定されたメディア セットにソースをバックアップするのではなく(通常のスクリプト)、プロアクティブ バックアップ スクリプトは、一時的にネットワーク上に存在するコンピュータとボリューム(Retrospectクライアント ソフトウェアがインストールされたノートブック コンピュータなど)を探します。ソースが見つかると、Retrospectはこれをバックアップします。Retrospectクライアントのユーザーがボリュームのバックアップを要求することもできます。プロアクティブ バックアップ スクリプトは多くの場合、定期的なバックアップ スクリプトと併用すると、包括的なバックアップ戦略を実現します。